『わかりやすい野球のルール』粟村哲志のブログ

『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)監修者である現役野球審判員のブログです
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映像によるルール解説(6)

映像によるルール解説の6本目です。インフィールドフライの第6回。インフィールドフライの解説はこれで最後です。



解説でも触れていますが、この「インフィールドフライと宣告された打球を処理している野手に対する妨害」については明確な規定がなく、2012年8月26日にMLBで起きた以下のプレイがきっかけとなって2013年に規則が改正されたものです(日本では2014年から適用)。



この試合で起きた実際のプレイでは、1死走者1・2塁、カウント1B-2Sから打者が1塁線に飛球を打ち上げ、球審が「インフィールドフライ・イフ・フェア」を宣告、塁審3人も同調します。しかし、立ち止まって打球の行方を見ていた1塁走者に、飛球に向かって走る一塁手が衝突、それを見た1塁塁審がインフィールドフライを宣告したまま守備妨害も宣告します。

ところが、この飛球を捕手が捕り損ね、バウンドした打球はファウル地域に転がっていきます。この打球に捕手が触れたかどうか映像では判然としないのですが、球審は一度「フェア」の宣告をしています。

さらに、状況が良く分からなくなったのか1塁走者が2塁に進んで来たため、押し出された2塁走者が3塁に進みますが、ここにボールが転送されてきてタッグ、3塁塁審が2塁走者のアウトを宣告します。

これで3アウトとばかりにマイアミの守備陣はベンチに引き揚げますが、ロサンゼルスのDon Mattingly監督が抗議に出て審判団が協議します。この結果、1塁走者は守備妨害でアウト、打者は打ち直しとうことで、2死2塁、カウント1B-2Sで再開という裁定になったようです。映像だけでは良く分からないので、当時の新聞記事などを総合すると、このときの審判団は「打者走者の守備妨害は取り消されない」「打球はファウルだった」という判断をしたようです。

私の解説ビデオの5本目と6本目で触れていますが、打球に対する守備は原則として優先されるので、打球に対する守備を走者が妨害したら即ボールデッドで妨害した走者アウト、打者走者は1塁に進塁が基本です。実際に、通常の内野ゴロを処理している野手を走者が妨害したら、審判員は即タイムをかけて、その走者をアウトにし、打者走者を1塁に進めます。

しかし、打球が結果としてファウルだった場合、またはファウル地域で捕球された場合には、打者を1塁に送るのはおかしいので、走者は守備妨害でアウトになりますが、打者は通常のファウルと同じように(0ストライクまたは1ストライクではストライクカウントが1つ追加されて)打ち直しになります。そのため、打球がフライになっているときに守備妨害があっても、打球がフェアになるかファウルになるか決まるまでタイムをかけてはならないとPBUCマニュアル(マイナーリーグの審判員マニュアル)には明記してあります。

捕球できなくてファウルになった場合は理解しやすいのですが、ファウル地域で捕球された場合というのがクセもので、捕球されたんだから打者もアウトじゃないのかと言いたいところです。しかし、あくまでも守備妨害の発生時点でボールデッドであるべきところ、打球がフェアになるかファウルになるかで打者の扱いが違ってくるから審判員はタイムをかけないで様子を見ているだけなので、「ファウル地域で処理された=フェアでない」ことが確定した時点で「守備妨害発生=ボールデッド」の原則にさかのぼるという考え方です。ボークも即ボールデッドであるべきところを、攻撃側のアドバンテージを見るためにいったん流して結果によって処置を変えますが、それと似ていますね。

それに、打球に対する守備妨害をダブルプレイにしろという議論は現場で常に出てくるものですが、野球のルールはそれを原則的には認めていません。「あの妨害がなければゲッツーが取れていたはずだ」という主張がもっともなときもありますが、必ずゲッツーになるという保証はありませんし、それを言い出したらキリがないので原則として守備妨害発生時にボールデッドにしてしまうわけです。ただし、ダブルプレイを防ぐために悪質な妨害をしたと審判員が認めたら、ペナルティーとして走者と打者の両方をアウトにするルールもちゃんと存在しています(7.09(f)および(g))。

それで、これまで明記されていなかったけど、インフィールドフライの際も処置を同じにしようということで、2013年の改正になったわけです。ただし、インフィールドフライが宣告されれば打者は自動的にアウトなので、通常の妨害と違って、打球がフェア地域で捕球されるか、捕球されなかった結果フェアになれば、走者も打者もアウト(ファウルの場合は通常の妨害と同じく走者アウトで打者打ち直し)ということになったわけです。

ややこしいので、もう一度以下に整理します。

(1)フェアゴロを処理しようとする内野手を走者が妨害
 →即ボールデッド、妨害した走者アウト、打者1塁へ(押し出される走者があれば進む、その他の走者は投球当時の塁へ戻る)

(2)ファウルのゴロを処理しようとする内野手を走者が妨害
 →即ボールデッド、妨害した走者アウト、打者ファウルで打ち直し

(3)内野フライを処理しようとする内野手を走者が妨害
 →審判員は守備妨害だけ宣告して結果を見る
(3-1)妨害にもかかわらず打球がフェア地域で捕球される
 捕球されたらタイム、妨害した走者アウト、打者は1塁へ(押し出される走者があれば進む、その他の走者は投球当時の塁へ戻る)
(3-2)妨害のために打球は捕球されず、結果的にフェアとなる
 フェア確定時にタイム、妨害した走者アウト、打者は1塁へ(押し出される走者があれば進む、その他の走者は投球当時の塁へ戻る)
(3-3)妨害にもかかわらず打球がファウル地域で捕球される
 捕球されたらタイム、妨害した走者アウト、打者打ち直し
(3-4)妨害のために打球は捕球されず、結果的にファウルとなる
 ファウル確定時にタイム、妨害した走者アウト、打者打ち直し

(4)インフィールドフライと宣告された打球を処理しようとする内野手を走者が妨害
 →守備妨害だけ宣告して結果を見る
(4-1)妨害にもかかわらず打球がフェア地域で捕球される
 捕球されたらタイム、妨害した走者アウト、打者はインフィールドフライでアウト(その他の走者は投球当時の塁へ戻る)
(4-2)妨害のために打球は捕球されず、結果的にフェアとなる
 フェア確定時にタイム、妨害した走者アウト、打者はインフィールドフライでアウト(その他の走者は投球当時の塁へ戻る)
(4-3)妨害にもかかわらず打球がファウル地域で捕球される
 捕球されたらタイム、妨害した走者アウト、打者打ち直し
(4-4)妨害のために打球は捕球されず、結果的にファウルとなる
 ファウル確定時にタイム、妨害した走者アウト、打者打ち直し

場合分けすると余計面倒になった気もしますが、原則を順に適用すれば正しい答えが出ます。守備妨害、走塁妨害はお互いが「やった」「やられた」を主張したり否定したりして揉め事になることが多いので、発生の瞬間に審判員がどれだけ説得力のある宣告を、適切な力強さでできるかどうかにトラブル回避のポイントがあります。正しいルール適用ができるよう、常にイメージトレーニングを怠らないようにしておきたいものです。

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2015年09月03日(Thu) 14:51












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プロフィール

粟村哲志

Author:粟村哲志
1975年8月4日広島県生まれ。早稲田大学卒。早大在学中に、故・西大立目永氏に師事して審判を学ぶ。リトルシニア関東連盟審判員、東京都野球連盟(JABA)審判員等を経て、2007年から国内独立リーグで活動。2007年北信越BCリーグ、2008年四国・九州アイランドリーグ、2012BCリーグ、2013~2014年ルートインBCリーグ(クルーチーフ)、2015日本女子プロ野球リーグで審判員を務める。

現在は、リトルシニア関東連盟審判部技術委員(練馬シニア所属)。NPO法人Umpire Development Corporation正会員。関東審判倶楽部(KUC)アドバイザー。東都学生軟式野球連盟嘱託審判員。

監修書に『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)、『バッティングパーフェクトマスター』『ピッチングパーフェクトマスター』(別冊ルール解説、新星出版社)がある。インタビューおよび寄稿に「中学野球小僧」(白夜書房)2006年7月号「実戦で役立つボーク完全解説」p114~121、2007年1月号「ぼくらの野球用具大特集」p46、2007年5月号「7つの場面で徹底理解するランナーのルール」p162~169、2008年5月号「中学球児のためのグラウンドルール&マナー講座」p114~119など。

主な出場記録は以下の通り。
【リトルシニア】
日本選手権大会(00~07、09~15)
全国選抜大会(02、04~05、07、10、13、15)
ジャイアンツカップ(01~02、06~07、09~15)
【プロアマ交流戦】
茨城ゴールデンゴールズ対NPB選抜「フューチャーズ」球審(2007.5.31 水戸市民球場)
【BCリーグ】
2007年公式戦6試合出場
2012年公式戦2試合出場
2013年公式戦37試合(うちGCS2試合)/NPB交流戦1試合/OP戦2試合出場
2014年公式戦(集計中)
【四国・九州アイランドリーグ】
2008年公式戦55試合出場/NPB交流戦2試合出場
【女子プロ野球リーグ】
2015年公式戦(集計中)

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