『わかりやすい野球のルール』粟村哲志のブログ

『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)監修者である現役野球審判員のブログです
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スリーフットレーン外を走行する守備妨害(日本シリーズ第5戦)

 昨年はワールドシリーズ第3戦が守備妨害でサヨナラゲームになり、このブログで解説を書きましたが、今年は日本シリーズで守備妨害による試合終了がありました。しかも、今回は日本一が決まった瞬間だっただけに、かなり大きく注目されることになりました。こんなことが立て続けに起こるんですね……。

 まずは、その瞬間の映像をご覧ください。



 1アウト満塁から、打者の西岡選手が1塁ゴロを打ちました。明石一塁手から細川捕手に転送されて、まず2アウト目が成立します。続けて細川捕手から1塁に転送されてダブルプレイを狙おうというところでしたが、1塁に戻った明石一塁手が捕球する寸前に、この送球が西岡選手の背中に当たり、ファウル地域に転がってしまいました。

 この映像には映っていませんが、この瞬間に球審の白井審判員がタイムをかけ、西岡選手に「守備妨害によるアウト」を宣告しているそうです。これで3アウト目が成立し、試合終了となったわけです。この判定の根拠となる規則は以下です。

公認野球規則6.05
 打者は、次の場合、アウトとなる。
(k) 一塁に対する守備が行われているとき、本塁一塁間の後半を走るに際して、打者がスリーフットレーンの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走って、一塁への送球を捕らえようとする野手の動作を妨げたと審判員が認めた場合。この際は、ボールデッドとなる。
 ただし、打球を処理する野手を避けるために、スリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走ることはさしつかえない。
【原注】 スリーフットレーンを示すラインはそのレーンの一部であり、打者走者は両足をスリーフットレーンの中もしくはスリーフットレーンのライン上に置かなければならない。


 スリーフットレーンというのは、本塁から1塁に向かう塁線の後半(45フィート地点以降)の外側に描かれている、幅3フィート・長さ48フィートの枠のことです。走者は基本的にはグラウンド上のどこを走っても差し支えありません。たとえば、ヒットを打った打者走者が、1塁へ向かって走る際に、勢いをつけるために膨らんで走ることは普通の行為であり、それを咎められたりすることはありません。ただ、打者走者が1塁に走っていく際、内野ゴロ等でセーフになりたい一心で一生懸命走っていくと、1塁を守る守備側の選手と交錯してしまうことが考えられます。実際に初期の野球ではそのようなことが頻繁に起こり、安全のために1塁ベースを半分外に出して打者走者が踏むところとしたり(ソフトボールのダブルベースのようなイメージです)、色々工夫があったようです。その工夫の結果として、スリーフットレーンが考案され、1塁手の守備を妨げる可能性があるプレイの際は、打者走者はこのレーンの中を走りなさいという決まりになったわけです。

 そのようにして確立された現在のルールでは、打者走者がこのレーンの中を走っていないときに、そのことによって1塁手が送球を捕らえる邪魔になった場合、守備妨害が適用されます。ですから、プレイとしては今回のように本塁方向から1塁に向かって送球されたケースが想定されています。そして、レーンの中を走るとはどういうことかというと、両足がレーンの中に入っていることが要求されます。片足だけ入って、もう片足がはみ出している状態ではダメです。ただし、レーンを描いている白線はレーンの一部ですから、白線を踏んでいる状態なら「足がはみ出している」とは見なしません。

 今回の西岡選手の走塁をよく見ると、左打者ですから打った直後こそファウル地域を走っていますが、すぐフェア地域に入り込んで、ファウルラインのすぐ左側を走り続けています。そして、45フィート地点を越えてもそのまま真っ直ぐファウルラインの左側をピタリと走り続け、最後の最後に1塁ベースを踏むためにライン上に出ます。その寸前か、その瞬間くらいに背中に送球が当たり、本多二塁手はボールを捕ることができませんでした。

 「ラインを踏んでいるなら妨害じゃないんじゃないの?」あるいは「妨害かもしれないけどギリギリのプレイだったのかな」などと思われる方もあるかもあるかもしれませんが、映像をよく見てください。西岡選手がファウルラインを踏んでいるのは彼の「右足」です。左足で踏んでいるならレーン内にいるとみなせますが、右足でラインを踏んでいても「両足がレーンの中にある」とはみなせません。それに、どう見ても西岡選手は最初から最後までスリーフットレーンの中を走っていません。これで妨害ではないというのは相当な無理があります。

 このルールで、いくつか誤解されやすいポイントを挙げておきます。ひとつは、すでに述べたように、「スリーフットレーンの外を走っていたから自動的にアウト」ではないということです。そんなことをしたら、ヒットを打ったほとんどの打者走者がアウトになってしまいます(笑)。あくまでも一塁手の守備を妨害するようなプレイが発生した場合に限るルールです。ふたつめに、スリーフットレーンの外を走っていた打者走者が「送球に当たったから」アウトというわけではないということです。ここは表現が難しいところなのですが、送球に当たったかどうかは結果論であって、問題となるのは「一塁手が守備を妨げられたかどうか」です。送球に当たったから一塁手が捕球できなかったのだという因果関係が成立しないと、妨害は適用されません。逆に、送球に当たらなくても、打者走者のせいで一塁手が送球を捕りづらかったと審判員が認めれば、妨害は適用されます。

 ふたつめの話をもう少し具体的に説明すると、たとえば今回のケースで、打者走者がスリーフットレーンの外側は外側でも、レーンの右側=ファウル地域側を走っていたとしましょう。そして、捕手は本塁前のフェア地域から送球し、打者走者が1塁ベースの手前で捕手からの送球にぶつかったとします。想像できましたか? このような形だと、捕手が1塁ベースの方向ではない、もっと右側に悪送球していることになり、仮に一塁手がこの送球を捕球できなかったとしても、それは打者走者がスリーフットレーンの外側を走っていたからとはいえません。審判員がそのように判断すれば、この場合はスリーフットレーン外走行による守備妨害は適用せず、ボールインプレイとして流します。

 いくつかの報道によれば、西岡選手は「レーン外を走ったのは故意ではない」という趣旨のコメントをしているようです。その真相は分かりませんが、この妨害に故意性は関係ありません。繰り返しになりますが、打者走者がスリーフットレーン内を走るか走らないかは任意です。走らなかったら妨害をとられる可能性がありますよということですが、それはプレイが起きてみないと分かりません。そのイチかバチかにかけて、相手のミスプレイを誘おうと思ってレーン外を走るのかもしれません。それもいいでしょう。でも、ルールに反するアンフェアなプレイをして、現実に妨害になってしまったら、結局のところ損をするんです。ズルイことをしたら取り締まられる。その現実は受け入れてほしいと思います。

 こうやって振り返ってみると、至極当たり前の、ルール通りのジャッジのように見えますが、日本シリーズという大舞台の、しかも勝負を決するプレイで、的確なジャッジを下した審判団は本当に素晴らしいと思います。さすが、2014年の日本プロ野球の最高峰を決する試合に選ばれた審判員だと感服します。見た通りを、見た通りに宣告して、まさに試合を「裁く」。お手本のようなジャッジを見せていただきました。

 2014年のプロ野球も、これでとうとう終わってしまいましたね。奇しくもワールドシーリーズも同じ日に終わり、しばらくはちょっと寂しいオフを過ごすことになりますが、また来年のスーパープレイに期待しましょう!

Comment

ありがとうございます。
編集
こんにちは。
適格で分かりやすい説明で自分も勘違いしていいたところまで分かり、
スッキリしました。
ありがとうございます。
因みにこの動画で、
細川捕手がアピールする前に白井球審がアウトを宣告されているのが少しだけ映っています。
審判の方は大変な職業だと思います。
精神的に負担のかかる仕事だと思いますが、
お身体お大事にされてがんばって下さいませ。
http://www.youtube.com/watch?v=B6TICvdutjM
2014年10月31日(Fri) 13:00
審判に拍手!!ナイスジャッジ!
編集
私も審判のジャッジに感動しました。
ハッキリと、ハイははい、いいえはいいえで和田監督の抗議に対していました。
すばらしい!!
振り返ってみると、主審も含めすべての審判が一つ一つのプレーをナイスジャッジを
していたからこそ、日本の最高峰の最後のゲームがあんな引き締まったいいゲームになったのですね。審判のみなさん、ナイスゲームをありがとうございました。
                     35年前の高校球児
2014年11月01日(Sat) 04:12
No title
編集
はじめまして。
わかりやすい解説でよくわかりました。
ひとつ質問があるのですが、
今回は一死満塁から本塁封殺→守備妨害で併殺・三死となりましたが、
もし無死満塁でこのような併殺となったらどのような状況で
試合再開となるのでしょうか(つまり、二死で走者はどうなるのか、です)。
根拠となるルールも教えてください。

よろしくお願いします。
2014年11月04日(Tue) 22:55
コメントありがとうございます。
編集
あまりこのブログにコメントが付いたことがないので、確認してなくてごめんなさい。コメントをくださった皆さん、ありがとうございます。

>ISSI様
良い動画をご紹介いただき、ありがとうございます。白井さんのアウト宣告が確認できますね。本塁のジャッジをするために、1塁・本塁の延長線上に下がったところにいたはずなのに、アウトの宣告をするときにはいつのまにか45フィート地点まで進んで、西岡選手の目の前で力強くアウトの宣告。改めて素晴らしいアンパイアリングだったと感服しました。応援のお言葉ありがとうございます。これからも頑張ります。

>Mr.K様
おっしゃる通りですね。本当に、日本最高峰の試合を裁くにふさわしい、日本最高峰の審判団だったと思います!

>AKIRA様
良いご質問を頂き、ありがとうございます。せっかくなので本編でお答えしたいと思います。少しお待ちください。
2014年11月11日(Tue) 11:15
ランダンプレー時のラインアウトジャッジについて
編集
東京都城北地区の硬式野球交流大会で以下のプレーがありました。
一二塁間のランダンプレーですが、3往復ほどしたのちに2塁から一塁に送球しその補給時点でランナーはスリーフィートラインを超える膨らみを取って一塁に帰塁しました。
その際に、送球を受けた二塁手からラインアウトのアピールがありましたがランナーセーフのジャッジが取られました。
そこで守備側のベンチから抗議があり、ラインアウトの主張がされましたが結果としてセーフ・ノータッグの判定のままでした。
ここで質問なのですが、捕球した二塁手がタッグ行為を行わずにラインアウトをアピールした事でランナーセーフのジャッジをとった事が審判側の主張です。
守備側ベンチではランダンプリーで明らかにラインアウトしている時点でそのアピールが通らないのはおかしいとの主張です。
試合は3分間の中断で、ランナーセーフで試合再開となりましたが後味が悪い状況です。

守備側ベンチ裏で、「タッチの素振りがなければランナーはどこまで行ってもいいのか?」と審判員への問いにたいして、「問題無し」と審判員からはコメントがされたようです。
試合後、この件について、審判クルー反省会のせきで責任審判員のかたからはタッグ行為を行っていない場合は「アウトにしてはいけないと規則書にかいてある」とコメントされてました。
私がみるかぎり規則書には「タッグ行為に行った際にスリーフィートを越えた走路が取られた場合」にラインアウトを宣告すると言った記載がされており、この部分をタッグ行為が必須と解釈されているかと思いますが、守備ベンチ側の主張は認識あやまりなのでしょうか?
確かに、ランダンプレーでランナーの走路は基本的に塁間を結ぶ直線上になる訳で、その中で明らかな膨らみをとった行為をセーフとジャッジする事にも違和感を感じてます。
ただ、責任審判員の方が言っていた「タッグに行っていない場合はアウトにしてはいけない」と言っている事が審判としての判断基準であればそこは子供たちに「タッグ行為必須」をしっかり指導しないといけない点だと思います。

どうあるべきなのか・・・コメント頂けますでしょうか?

takeshi.miura@alive-inc.jp に返信頂けますと助かります。

2015年11月23日(Mon) 03:44
無死(1死)、1・2塁
編集
ご質問があります。
無死(1死)、1・2塁、ツーストライクの場面でエンドランをしたとします。
打者は低目のワンバウンドを三振。しかし、振り逃げと勘違いし1塁へ走ったとします。
ワンバンをはじいた捕手も振り逃げ成立と勘違いし、2塁と3塁は間に合わないと思い、慌てて1塁へ送球したとします。
その時に打者ランナーがスリーフットレーンの内側を走り、捕手からの送球が打者ランナーに当たったとします。
その時の対応はどのようなものになりますか?
2016年09月22日(Thu) 22:29
Re: 無死(1死)、1・2塁
編集
> ご質問があります。
> 無死(1死)、1・2塁、ツーストライクの場面でエンドランをしたとします。
> 打者は低目のワンバウンドを三振。しかし、振り逃げと勘違いし1塁へ走ったとします。
> ワンバンをはじいた捕手も振り逃げ成立と勘違いし、2塁と3塁は間に合わないと思い、慌てて1塁へ送球したとします。
> その時に打者ランナーがスリーフットレーンの内側を走り、捕手からの送球が打者ランナーに当たったとします。
> その時の対応はどのようなものになりますか?

久しぶりにログインしたもので、コメントに気付いておらず失礼しました。

ご質問のケースは「アウトになったばかりの打者による妨害」と考えられますので、守備の対象である1塁走者をアウトにすることになります。(規則6.01a5)
この妨害は、発生の瞬間ボールデッドになりますので、2塁走者は妨害発生の瞬間に占有していた塁に戻されます。このケースではよほどのことがない限り2塁に戻すことになると思います。
2017年02月11日(Sat) 22:29












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プロフィール

粟村哲志

Author:粟村哲志
1975年8月4日広島県生まれ。早稲田大学卒。早大在学中に、故・西大立目永氏に師事して審判を学ぶ。リトルシニア関東連盟審判員、東京都野球連盟(JABA)審判員等を経て、2007年から国内独立リーグで活動。2007年北信越BCリーグ、2008年四国・九州アイランドリーグ、2012BCリーグ、2013~2014年ルートインBCリーグ(クルーチーフ)、2015日本女子プロ野球リーグで審判員を務める。

現在は、リトルシニア関東連盟審判部技術委員(練馬シニア所属)。NPO法人Umpire Development Corporation正会員。関東審判倶楽部(KUC)アドバイザー。東都学生軟式野球連盟嘱託審判員。

監修書に『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)、『バッティングパーフェクトマスター』『ピッチングパーフェクトマスター』(別冊ルール解説、新星出版社)がある。インタビューおよび寄稿に「中学野球小僧」(白夜書房)2006年7月号「実戦で役立つボーク完全解説」p114~121、2007年1月号「ぼくらの野球用具大特集」p46、2007年5月号「7つの場面で徹底理解するランナーのルール」p162~169、2008年5月号「中学球児のためのグラウンドルール&マナー講座」p114~119など。

主な出場記録は以下の通り。
【リトルシニア】
日本選手権大会(00~07、09~15)
全国選抜大会(02、04~05、07、10、13、15)
ジャイアンツカップ(01~02、06~07、09~15)
【プロアマ交流戦】
茨城ゴールデンゴールズ対NPB選抜「フューチャーズ」球審(2007.5.31 水戸市民球場)
【BCリーグ】
2007年公式戦6試合出場
2012年公式戦2試合出場
2013年公式戦37試合(うちGCS2試合)/NPB交流戦1試合/OP戦2試合出場
2014年公式戦(集計中)
【四国・九州アイランドリーグ】
2008年公式戦55試合出場/NPB交流戦2試合出場
【女子プロ野球リーグ】
2015年公式戦(集計中)

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