『わかりやすい野球のルール』粟村哲志のブログ

『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)監修者である現役野球審判員のブログです
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ライトの故障

 先日、私が担当していたルートインBCリーグの公式戦で、プレイの進行中に照明灯が故障するトラブルがありました。

 試合は2014年5月16日(金)、長野県営上田球場で行われた信濃グランセローズ対石川ミリオンスターズ前期第1回戦。私は球審を担当していました。

 5回裏の先頭打者・竜太郎選手が8球粘った末にセカンドゴロを打ち、1塁に駆け出した瞬間、1塁側スタンド後方の照明灯が消えました。走者なしからの内野ゴロなので、竜太郎選手を追いかけるような形で私も1塁に駆け出していましたが、背後で照明が消えてスタンドがざわついたのは分かりました。しかし、消えたのは1基だけで、二塁手がゴロを処理して1塁に送球し、1塁塁審が判定することには支障がなさそうだったので、プレイはそのまま続けさせ、1塁がアウトになったのを確認してから試合を止めました。

 規則では以下のように定められています。

公認野球規則5.10
 審判員が“タイム”を宣告すれば、ボールデッドとなる。
 次の場合、球審は“タイム”を宣告しなければならない。
(b) ライトの故障のために、審判員がプレイを見るのに困難となるか不可能となった場合。
【付記】 各リーグは、ライトの故障により試合が中断された場合の特別規則を、独自に設けてもよい。
【注1】 プレイの進行中にライトの故障が生じたとき、その瞬間完了されていないプレイは無効とする。ダブルプレイおよびトリプルプレイが行われている間に、ライトの故障が生じた場合には、たとえ最初のアウトが成立した後であっても、そのプレイは完成されたものとはみなされない。
 ライトが復旧したときには、ライトの故障のために無効とされたプレイが始まる前の状態から再開しなければならない。
【注2】 打球、投手の投送球または野手の送球が7.05に規定される状態となったとき、および四球、死球、ボーク、捕手またはその他の野手の妨害、走塁妨害などで、走者が安全に進塁できる状態となったときにライトが消えた場合に限って、たとえ各走者の走塁が完了していなくても、そのプレイは有効とする。
【注3】 プレイが行われているとき、一部のライトが消えた場合(たとえば電圧が急に低下した場合とか、1、2基が故障を起こした場合)などには、ただちにタイムとするか、またはプレイが終了するまでボールインプレイの状態におくかは、審判員の判断で決定する。


 規則は基本的に「プレイを見るのに困難」「不可能」な場合を想定して規定されており、前述の通り、故障したのは1基だけで、実際にプレイを続けるのに支障はなかったのでプレイを完了させましたが、問題はこの後です。このまま試合を続けるにはやや暗い。故障を無視して進めるわけにもいきません。責任審判でもあった私は、すぐさま球団スタッフに状況を確認しました。すると、この球場では以前にも同じような故障があり、その際に全ての照明を落として再点灯したりという処置をとった結果、かなり長い時間を費やしてしまったので、今回はできればこのまま試合を続けてもらい、その間に業者を呼んで修理したいというようなことを言われました。

 無為にお客さんを待たせるのは何より避けたいところです。このイニングを終われば5回のインターバルに入り、イベント等で10分程度の時間があります。この球場で前年にも照明灯が故障した話は私も聞いており、同じ轍を踏みたくないという球団側の話も分かります。しかし、さっきは突発事態で選手も対応できたものの、試合を続けることは可能なのか……。

 色々考えながら、とりあえず両監督に相談することにしました。信濃・大塚晶文監督、石川・森慎二監督ともに、苦笑いしながらも球団の意向を尊重してくれる方向で話がまとまりました。ただ、選手たちが実際にプレイを行えるのかどうかが問題です。そこで、投球練習をしてみたり、内野でボール回しをしてみたりして、一応選手たちの意見も聞きました。その結果、少し見えづらいけど、真っ白いボールを使えば何とかできますというような意見が大半だったので、最終的には私の判断で試合を続行することにしました。

 中断は約8分間でした。この後、5回裏は3者凡退であっさり終了。5回のイベントで時間を稼ぎつつ、球団側から「6回表から再点灯してみたい」との申し出があり、実行してみたところ成功したので、6回表の途中から照明が全面的に回復して試合を進行することができました。故障中は「少し暗いけど、これでもできるじゃないか」と思いながらやっていましたが、回復してみると、当たり前ですが、やはり照明は全てついていた方がよかったですね(笑)。

 試合再開までの措置は、規則に定められていることではありませんし、判断の難しいところです。しかし、興業として行っている以上、可能な限り試合を止めないことが何よりも大切だと考え、選手の安全も考慮しながら、今回のような対応をしました。結果的にわずか8分間の中断で再開することができ、試合も無事に進行できたので、対応としては上出来だったと思います。私が場内放送で、「両監督合意のもと、このまま試合を続行します」と発表したとき、お客さんから大きな拍手と温かい声援を頂いたのが嬉しかったです。

 ちなみに、過去にあったNPBでの実例で、濃霧や強風を理由に試合が中断した際、外野にノックを打ってみたりして試合続行のテストをしたことがあります。このようなことをしても、試合をしたくない方がわざと捕れないふりをしたりすれば意味がないので、現在では両リーグともアグリーメントでこのようなテストを禁じています。このことは私の頭にあったので、キャッチボール等をして選手の意見を聞くことに若干の迷いはあったのですが、ある程度選手や監督にも納得して続行してもらうためにはやむを得ないと判断して行いました。試合後にクルーの反省会でも検討し、その後も色々考えてみましたが、結果として悪くない判断だったと思っています。

 審判員は、試合の進行をつかさどる役割を担っています。そのために、規則で明確に定められていないことについては、審判員の裁量で裁定を下す権能を与えられています。このようなときこそ、常識力を持って事態に当たらなければなりません。上手くいくことばかりではないですが、こういう経験をひとつひとつ積むことで、試合をコントロールする力が養われていくのだと思います。

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プロフィール

粟村哲志

Author:粟村哲志
1975年8月4日広島県生まれ。早稲田大学卒。早大在学中に、故・西大立目永氏に師事して審判を学ぶ。リトルシニア関東連盟審判員、東京都野球連盟(JABA)審判員等を経て、2007年から国内独立リーグで活動。2007年北信越BCリーグ、2008年四国・九州アイランドリーグ、2012BCリーグ、2013~2014年ルートインBCリーグ(クルーチーフ)、2015日本女子プロ野球リーグで審判員を務める。

現在は、リトルシニア関東連盟審判部技術委員(練馬シニア所属)。NPO法人Umpire Development Corporation正会員。関東審判倶楽部(KUC)アドバイザー。東都学生軟式野球連盟嘱託審判員。

監修書に『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)、『バッティングパーフェクトマスター』『ピッチングパーフェクトマスター』(別冊ルール解説、新星出版社)がある。インタビューおよび寄稿に「中学野球小僧」(白夜書房)2006年7月号「実戦で役立つボーク完全解説」p114~121、2007年1月号「ぼくらの野球用具大特集」p46、2007年5月号「7つの場面で徹底理解するランナーのルール」p162~169、2008年5月号「中学球児のためのグラウンドルール&マナー講座」p114~119など。

主な出場記録は以下の通り。
【リトルシニア】
日本選手権大会(00~07、09~15)
全国選抜大会(02、04~05、07、10、13、15)
ジャイアンツカップ(01~02、06~07、09~15)
【プロアマ交流戦】
茨城ゴールデンゴールズ対NPB選抜「フューチャーズ」球審(2007.5.31 水戸市民球場)
【BCリーグ】
2007年公式戦6試合出場
2012年公式戦2試合出場
2013年公式戦37試合(うちGCS2試合)/NPB交流戦1試合/OP戦2試合出場
2014年公式戦(集計中)
【四国・九州アイランドリーグ】
2008年公式戦55試合出場/NPB交流戦2試合出場
【女子プロ野球リーグ】
2015年公式戦(集計中)

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