『わかりやすい野球のルール』粟村哲志のブログ

『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)監修者である現役野球審判員のブログです
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選手交代の通告を忘れた場合

以前に質問を受けたケースなのですが、実際に見たわけではないので、多少状況を補って書きます。

4回裏に代打が使われ、攻撃終了後に後攻チームの監督が、その代打に代わって新しい選手が守備に就くと球審に通告してきました。で、球審が場内放送にその連絡を忘れたのか、場内放送の方で失念したのかは定かではないのですが、ともかく場内放送がされなかったんだそうです。

それで、5回裏になってその選手に打順が回ってきたときに、先攻チームの監督から球審に対して「あんな選手聞いてないけど、いつからいたんだ? こんなことが認められるのか?」と抗議があったそうです。

質問としては、こんなときはどのように対処したらいいでしょうか、という話だったのですが、いかがでしょうか。

結論から言うと、この交代は認められます。規則を引用しましょう。

野球規則3.06
 監督は、プレーヤーの交代があった場合は、ただちにその旨を球審に通告し、あわせて打撃順のどこに入るかを明示しなければならない。

野球規則3.07
 交代通告を受けた球審は、ただちにその旨を自ら発表するか、または発表させる義務がある。

野球規則3.08
 交代発表のなかったプレーヤーの取り扱い
(a)代わって出場したプレーヤーは、たとえその発表がなくても、次のときから、試合に出場したものとみなされる。
 (1)投手ならば、投手板上に位置したとき。
 (2)打者ならば、バッタースボックスに位置したとき。
 (3)野手ならば、退いた野手の普通の守備位置についてプレイが始まったとき
 (4)走者ならば、退いた走者が占有していた塁に立ったとき。
(b)前項で出場したものと認められたプレーヤーが行ったプレイ、およびそのプレーヤーに対して行われたプレイは、すべて正規のものとなる。


※赤字・下線は粟村注

 以上のように、監督や球審は選手交代を通告したり発表させたりする義務がありますが、万が一それが行われなかったとしても、選手が代わって出場したと常識的に判断できるタイミングで、交代は正当化されることになっているわけです。

 ですから、質問のケースでは、代打の代わりに守備に就いた選手が半イニングをフィールドで過ごし、さらに打席に立ったわけですから、もう充分すぎるくらい交代選手として認められると言っていいでしょう。そのときの球審の方は「ごめんごめん、オレが言い忘れたのかなあ。でも、4回裏のときに監督から言われて、そのときから守備についてるのは間違いないから、それでお願いします」という趣旨のことを言って対処されたそうですが、それで問題ないと思います。

 ところで、3.08(a)の(1)~(4)のうち、(3)だけ趣が違うと思われませんか? それでわざわざ赤字・下線で強調しておいたのですが、この部分に「プレイが始まったとき」と断ってあるのは、こんな事件がきっかけなんだそうです。手元にある、鈴木美嶺・郷司裕編『わかりやすい公認野球規則1993』という本から引用します。

 一九七五年の米大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースとデトロイト・タイガースの試合の途中、攻守交代のときにヤンキースのクリス・シャンブリス一塁手が“用具の修理”のためクラブハウス(ロッカールーム)にひっこんでいるあいだに、ルウ・ピネラがダグアウトから駆け出してきて一塁手をつとめ内野手を相手に守備練習をしていた。プレイ再開になる前にシャンブリスがもどって一塁の守備について、球審が“プレイ”を宣したのだが、そのとたん、タイガースのスパーキー・アンダーソン監督が「ピネラがひっこんだシャンブリスの守備位置についたと同時にピネラが自動的に新しく出場した一塁手になるはずだ」と抗議した。球審はこの抗議を認めなかったのだが、これからも同様の抗議は起こるかもしれないことを予想して、米国ルール委員会は、一九八〇年からルールブックに「プレイがはじまったとき」という但し書きを加えたというわけである。(ベースボール・マガジン社『わかりやすい公認野球規則1993』p41)

 問題になったヤンキースのルウ・ピネラ選手というのは、イチロー選手が大リーグ入りしたときにシアトル・マリナーズの監督を務めていた人なので、日本の野球ファンにも馴染みがあると思います。

 キャッチャーに関しては、用具をつけたりして交代に時間がかかることがあるので、代わりの人が投球練習の相手をすることはよくありますが、他の野手ではあまりないかもしれません。しかし、常識的に考えれば他の野手だって攻守交代中に控え選手が手伝いをしたって何の問題もないでしょう。それで即交代と考える方が無理があります。それでも、当時のルールに「退いた野手の普通の守備位置に立ったとき」としか書いてなかったのだとすれば、アンダーソン監督の抗議も筋は通っています。

 野球規則というのは、こんな風にして、何か起こるたびにつぎはぎしながら作られてきました。そういう歴史を知ることも、ルールを理解する助けになると思います。

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プロフィール

粟村哲志

Author:粟村哲志
1975年8月4日広島県生まれ。早稲田大学卒。早大在学中に、故・西大立目永氏に師事して審判を学ぶ。リトルシニア関東連盟審判員、東京都野球連盟(JABA)審判員等を経て、2007年から国内独立リーグで活動。2007年北信越BCリーグ、2008年四国・九州アイランドリーグ、2012BCリーグ、2013~2014年ルートインBCリーグ(クルーチーフ)、2015日本女子プロ野球リーグで審判員を務める。

現在は、リトルシニア関東連盟審判部技術委員(練馬シニア所属)。NPO法人Umpire Development Corporation正会員。関東審判倶楽部(KUC)アドバイザー。東都学生軟式野球連盟嘱託審判員。

監修書に『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)、『バッティングパーフェクトマスター』『ピッチングパーフェクトマスター』(別冊ルール解説、新星出版社)がある。インタビューおよび寄稿に「中学野球小僧」(白夜書房)2006年7月号「実戦で役立つボーク完全解説」p114~121、2007年1月号「ぼくらの野球用具大特集」p46、2007年5月号「7つの場面で徹底理解するランナーのルール」p162~169、2008年5月号「中学球児のためのグラウンドルール&マナー講座」p114~119など。

主な出場記録は以下の通り。
【リトルシニア】
日本選手権大会(00~07、09~15)
全国選抜大会(02、04~05、07、10、13、15)
ジャイアンツカップ(01~02、06~07、09~15)
【プロアマ交流戦】
茨城ゴールデンゴールズ対NPB選抜「フューチャーズ」球審(2007.5.31 水戸市民球場)
【BCリーグ】
2007年公式戦6試合出場
2012年公式戦2試合出場
2013年公式戦37試合(うちGCS2試合)/NPB交流戦1試合/OP戦2試合出場
2014年公式戦(集計中)
【四国・九州アイランドリーグ】
2008年公式戦55試合出場/NPB交流戦2試合出場
【女子プロ野球リーグ】
2015年公式戦(集計中)

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