『わかりやすい野球のルール』粟村哲志のブログ

『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)監修者である現役野球審判員のブログです
TOP ≫ ARCHIVE ≫ 2017年04月
ARCHIVE ≫ 2017年04月
       次ページ ≫

≪ 前月 |  2017年04月  | 翌月 ≫

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | Comments (-) | Trackbacks (-)

【2017年公認野球規則改正(9)】

(9) 【5.08原注】の表現を一部改め、配列を変更する。

 前回の続きで5.08の修正ですが、こちらは日本独自の改正です。【5.08原注】は、これまで米国オフィシャルルールズとは配列や文章表現が異なっている部分が多く、それをできるだけ原文に合わせたのが今回の改正です。ですから、この改正も昨年までと規則の内容や解釈が変わっているわけではありません。

 ちなみに、規則5.08は「得点の記録」という見出しがついている項目で、その【原注】は具体例をいろいろ挙げながら説明を加えてる部分です。ほとんどが“APPROVED RULING”という項目の羅列で、これは本来『公認野球規則』では「規則説明」という見出しになるはずのところ、改正前は多くが「例」という見出しになっていました。また、その例に出てくる状況のアウトカウントや走者の位置をすこしいじってあったり、項目の順番を入れ替えたり、文章を少し端折ったりしてありました。

 プロアマ共通のルールブックとして『公認野球規則』が誕生したのは、1956年のことです。米国オフィシャルルールズを原典としながらも、かつては東京六大学野球のルールブック、毎日新聞社編纂のルールブック、朝日新聞社編纂のルールブック、軟式野球連盟のルールブック、そしてプロ野球のルールブックと、日本には何種類ものルールブックが存在していました。これを統一して日本で唯一の野球規則書を作ろうということになったのが1955年暮れで、プロアマそれぞれの規則委員が条文を一つ一つ突き合わせて作業をしたそうです。

 素晴らしい先達のご尽力によって完成した『公認野球規則』は、それ以降、毎年改正を重ねて現在に至ります。ただ、当時は現在とは通信事情も異なりますし、米国に何かを照会するのも簡単ではなかったり、お互いのやり取りに行き違いがあったりしたこともあったようで、規則解釈を誤ってしまったり、翻訳の内容に日本独自の解釈が含まれたりすることも多かったようです。もともと米国オフィシャルルールズにも、本則とは別に“Comment”(【原注】)、“NOTE”(【付記】)、“EXCEPTION”(【例外】)、“APPROVED RULING”(【規則説明】)という注釈が色々加えられています(カッコ内は『公認野球規則』での表記)。しかし、『公認野球規則』には、これに加えて【注】という項目があり、これが日本の規則委員会独自の解釈や規則説明になっています。この【注】はかなりの分量があり、『公認野球規則』は米国オフィシャルルールズの単なる翻訳ではない、日本版ルールブックと呼べるものになっています。

 たとえば、今回話題にしている【5.08原注】にしても、具体例にはジョーンズ、スミス、ブラウンといった人名が用いられています。これはアメリカの規則や審判関係のテキストでは一般的なことです。しかし、『公認野球規則』では人名は省略し、原文で「ジョーンズが2塁、スミスが1塁」と書いてあるところを「走者一・二塁のとき」と書き換えたりしています。こういう工夫をひとつひとつ考えなければならなかった最初の作業はとても大変だっただろうと思います。

 しかしながら、アマチュア野球では国際試合の機会が増え、プロ野球でも日本人プレイヤーがMLBに移籍することが当たり前になり、NPBを経ないで米国マイナーリーグや世界各地のプロリーグに挑戦する日本人も多くなっている時代において、日本独自のルールブックでよいのだろうかという考えが出てくるようになりました。それで、現在は『公認野球規則』の内容を詳細に検討し、日本独自の解釈はできるだけなくし、翻訳の正確でないところも原文に忠実に合わせていく方向で毎年改正が行われています。【5.08原注】も、そういう流れで「原文通り」に修正したというわけです。

 内容は非常に煩瑣になりますので、最後にまとめておきますから興味のある方はご参照ください。ともかくご理解いただきたいのは、日本の規則委員会は、その発足当初から現在に至るまで、アメリカのルールブックをただ翻訳するだけでなく、常にその内容について検討に検討を重ねて、その時代に合った最良のルールブックを作ろうと努力されているということです。今年、野球殿堂入り(特別表彰)を果たされた故・鈴木美嶺氏は、『公認野球規則』発刊時からのアマチュア野球規則委員として活躍された方ですが、このような形でその功績が称えられることは、わが国の野球界にとって本当に素晴らしいことだと思います。

『公認野球規則』2016年版と2017年版および『Official Baseball Rules』の5.08原注対照表(粟村作成)
jpg画像です。サムネイルをクリックしてください。
obr_comment_5_08
スポンサーサイト
プロフィール

粟村哲志

Author:粟村哲志
1975年8月4日広島県生まれ。早稲田大学卒。早大在学中に、故・西大立目永氏に師事して審判を学ぶ。リトルシニア関東連盟審判員、東京都野球連盟(JABA)審判員等を経て、2007年から国内独立リーグで活動。2007年北信越BCリーグ、2008年四国・九州アイランドリーグ、2012BCリーグ、2013~2014年ルートインBCリーグ(クルーチーフ)、2015日本女子プロ野球リーグで審判員を務める。

現在は、リトルシニア関東連盟審判部技術委員(練馬シニア所属)。NPO法人Umpire Development Corporation正会員。関東審判倶楽部(KUC)アドバイザー。東都学生軟式野球連盟嘱託審判員。

監修書に『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)、『バッティングパーフェクトマスター』『ピッチングパーフェクトマスター』(別冊ルール解説、新星出版社)がある。インタビューおよび寄稿に「中学野球小僧」(白夜書房)2006年7月号「実戦で役立つボーク完全解説」p114~121、2007年1月号「ぼくらの野球用具大特集」p46、2007年5月号「7つの場面で徹底理解するランナーのルール」p162~169、2008年5月号「中学球児のためのグラウンドルール&マナー講座」p114~119など。

主な出場記録は以下の通り。
【リトルシニア】
日本選手権大会(00~07、09~15)
全国選抜大会(02、04~05、07、10、13、15)
ジャイアンツカップ(01~02、06~07、09~15)
【プロアマ交流戦】
茨城ゴールデンゴールズ対NPB選抜「フューチャーズ」球審(2007.5.31 水戸市民球場)
【BCリーグ】
2007年公式戦6試合出場
2012年公式戦2試合出場
2013年公式戦37試合(うちGCS2試合)/NPB交流戦1試合/OP戦2試合出場
2014年公式戦(集計中)
【四国・九州アイランドリーグ】
2008年公式戦55試合出場/NPB交流戦2試合出場
【女子プロ野球リーグ】
2015年公式戦(集計中)

カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
FC2カウンター
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
Amazon
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。