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『わかりやすい野球のルール』粟村哲志のブログ

『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)監修者である現役野球審判員のブログです
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外野フライの「落球」

 昨日の阪神-巨人12回戦(甲子園)で、最後のプレイが「レフトゴロ併殺打」だったことが話題になりました。

◇ダイジェスト映像
※問題のシーンは4:00頃から

◇試合結果
【NPB公式】http://npb.jp/scores/2018/0527/t-g-12/playbyplay.html
【スポーツナビ】https://baseball.yahoo.co.jp/npb/game/2018052702/top

◇各紙の記事
【日刊スポーツ】https://www.nikkansports.com/baseball/news/201805270000546.html
【スポニチ】https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2018/05/27/kiji/20180527s00001173286000c.html

 プレイ自体は映像や記事を確認してもらえば大体分かると思いますが、一応おさらいしておきます。1アウト満塁から打球はレフトフライ、左翼手が捕球態勢に入って打球をグラブに収めたものの、送球動作に入る際に落球しました。打球判定のため外野にゴーアウトした三塁塁審は「ノーキャッチ」とジャッジして、かなり長い間ノーキャッチを知らせるゼスチュア(セーフの形)をしていましたが、巨人の走者は完全捕球と判断して3塁走者はタッグアップからホームイン、2塁と1塁の走者は元の塁にとどまっていました。しかし、ジャッジがノーキャッチであることに気付いた阪神守備陣は、拾ったボールを3塁、2塁と転送し、それぞれフォースアウトを取りました。選手たちが戸惑っていたためか、審判団が集まって状況を確認し、責任審判からダブルプレイで試合終了と場内に説明が行われました。

 ルールの面で注目するところは、この場合は2つのアウトがいずれもフォースアウトなので、3アウトになるより早くホームインしていった3塁走者の得点が認められないことです(規則5.08a例外)。また、グラブに収めた後での落球なので走者を生かしてしまえば左翼手に失策がつくところですが、結果的に併殺を完成したので失策とはならず、打者の記録はレフトゴロとなるところも面白いところです。

 このプレイを見て思い出したのが、私が四国・九州アイランドリーグで審判を務めていた2008年の試合でのことです。2008年8月24日に新居浜で行われた愛媛マンダリンパイレーツ対高知ファイティングドッグスの試合に、私は3塁塁審として出場していました。

◇試合結果
【四国アイランドリーグplus公式】http://www.iblj.co.jp/game/3307/

 たしか4回裏だったと思いますが、愛媛の先頭打者がレフトフライを打ちました。イージーなフライで、私は軽くゴーアウトしてキャッチのジャッジをしたと記憶しています。すると、次の打者もレフトフライを打ち上げました。今度はやや大きなフライで、私もさっきより少し頑張って走って追いかけましたが、左翼手のYAMASHIN(山本伸一)がフェンス前で追いつき、シングルハンドで捕球しました。私がそれを見て「捕ったな」と思った瞬間、YAMASHINがボールを落とし、慌てて拾い上げたのです。

 まさに、昨日の阪神・中谷将大選手と同じような動きでした。それを見た私は「捕ったのに落とした!」と思いました。その瞬間、頭をフル回転させて、捕球なのか落球なのかを考え、捕球とみなすのは無理だと判断して「ノーキャッチ」のコールをしました。

 もちろん、YAMASHIN本人は捕球だと思っているだろうと思うので、大きな声と力強いゼスチュアで「ノーキャッチ!ノーキャッチ!ノーキャッチ!」と何度も繰り返し、長い時間両手を左右に広げたままにしておきました。私のコールに気付いたYAMASHINは内野にボールを戻すと同時に私の方に駆け寄り「アワさん!捕りましたって!」と抗議してきましたが、そのときは自信をもって下したジャッジだったので、「いや、落とした!気持ちは分かるけど、落としたよ!」と撥ねつけました。

 しかし、ふと気づくと、高知の内野陣が私を取り囲んで口々に「いやー、捕ってますよ~」と言ってきます。YAMASHINも必死の形相で「気持ちは分かるんなら、捕ったでいいじゃないですか!」と抗議してきます。私は一生懸命「いや、落としたって!捕ってないって!」と返事をしながら、内心では「これだけ選手が口をそろえて言うのなら、判断が間違っていたのかもしれない」と思い始めていました。目の前で起こった事実は、目を凝らしてしっかり見つめました。しかし、そこから導くべき解釈が正しくなかったのかもしれないという不安です。

20080824新居浜1
《写真》高知FDの選手たちに抗議されているところ

 そのうち3塁ベンチから高知FDの定岡智秋監督がゆっくりやってきて、審判クルーも私から選手を引きはがしに来てくれました。強硬に抗議されるかと覚悟していたのですが、定岡監督はひとこと「落とした?」とだけ聞かれたので、私は「落としました。捕球とみなすのは無理です」と答えました。監督は「うーん」と少しだけ考えてから、「ん、分かった」と言って引き下がり、不満そうな選手たちにも守備に戻るよう、うながしました。

 実はその直後にあったボークの判定を巡って今度は定岡監督が激怒して大変だったとか、その後YAMASHINが口をきいてくれなくなったとか色々あるのですが(笑)、今回の件とは関係ないので省略します。ただ、この試合は地元放送局でテレビ中継されていて、長い間リーグのホームページにアップされていたため、後で何度も何度もその場面を見ました(現在はその動画は削除されています)。繰り返し確認した中で、打った打者自身がレフトフライだと思ってベンチに帰ろうとしていたところが映っていたのと、YAMASHINの動作を見ると、やはり捕球後の持ち替えの動作で落としているように見え、正直なところキャッチの方がよかったのかなと思う気持ちもあります。

 これはひとつの分析なんですが、例えば同じような「落球」が、内野ゴロゲッツーのピボットマンの動きだったら、これはおそらく捕球を認めてフォースアウトをひとつ取ると思います。しかし、外野手がこの「落球」をすると、みんな慌てた動作でボールを拾いに行くんです。10年前のYAMASHINもそうでしたし、昨日の中谷もそうでした。これが、審判目線では「落とした!」と思ってノーキャッチのコールにつながるのではないかと思っています。昨日の甲子園の実況アナウンサーの人も、最初は犠牲フライと思いながら、転がるボールを追いかける中谷を見て「あ!ボールを落とした!落としましたよ!」と叫んでますよね。ここの見た目がポイントなんじゃないかと思います。

 でも、アップの映像でリプレイを見ると「捕球でいいかなあ」と思いますし、同じグラウンドレベルでも選手目線では「捕球」の判断が大勢を占めるわけです。このジャッジは審判の判断によるものなので、正しいとか正しくないとかいう性質のものではありませんが、多くの人に納得してもらえるジャッジをするためには、こういったところの感覚を養っていくことが大切なのかなと思います。そういう意味では、私は10年前の新居浜で、よい経験をさせてもらいました。
 
 映像を見つけられませんでしたが、過去にMLBでも同じようなケースをノーキャッチとジャッジして揉めたのを見たことがあります。フィールド上で完全捕球かどうかを見極めるのは、洋の東西を問わず難しいようです。

20080824新居浜2
《写真》1塁塁審のボーク判定に激怒して抗議する高知FD定岡監督と審判団(真ん中が粟村)



『わかりやすい野球のルール』2018年版
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【2017年公認野球規則改正(9)】

(9) 【5.08原注】の表現を一部改め、配列を変更する。

 前回の続きで5.08の修正ですが、こちらは日本独自の改正です。【5.08原注】は、これまで米国オフィシャルルールズとは配列や文章表現が異なっている部分が多く、それをできるだけ原文に合わせたのが今回の改正です。ですから、この改正も昨年までと規則の内容や解釈が変わっているわけではありません。

 ちなみに、規則5.08は「得点の記録」という見出しがついている項目で、その【原注】は具体例をいろいろ挙げながら説明を加えてる部分です。ほとんどが“APPROVED RULING”という項目の羅列で、これは本来『公認野球規則』では「規則説明」という見出しになるはずのところ、改正前は多くが「例」という見出しになっていました。また、その例に出てくる状況のアウトカウントや走者の位置をすこしいじってあったり、項目の順番を入れ替えたり、文章を少し端折ったりしてありました。

 プロアマ共通のルールブックとして『公認野球規則』が誕生したのは、1956年のことです。米国オフィシャルルールズを原典としながらも、かつては東京六大学野球のルールブック、毎日新聞社編纂のルールブック、朝日新聞社編纂のルールブック、軟式野球連盟のルールブック、そしてプロ野球のルールブックと、日本には何種類ものルールブックが存在していました。これを統一して日本で唯一の野球規則書を作ろうということになったのが1955年暮れで、プロアマそれぞれの規則委員が条文を一つ一つ突き合わせて作業をしたそうです。

 素晴らしい先達のご尽力によって完成した『公認野球規則』は、それ以降、毎年改正を重ねて現在に至ります。ただ、当時は現在とは通信事情も異なりますし、米国に何かを照会するのも簡単ではなかったり、お互いのやり取りに行き違いがあったりしたこともあったようで、規則解釈を誤ってしまったり、翻訳の内容に日本独自の解釈が含まれたりすることも多かったようです。もともと米国オフィシャルルールズにも、本則とは別に“Comment”(【原注】)、“NOTE”(【付記】)、“EXCEPTION”(【例外】)、“APPROVED RULING”(【規則説明】)という注釈が色々加えられています(カッコ内は『公認野球規則』での表記)。しかし、『公認野球規則』には、これに加えて【注】という項目があり、これが日本の規則委員会独自の解釈や規則説明になっています。この【注】はかなりの分量があり、『公認野球規則』は米国オフィシャルルールズの単なる翻訳ではない、日本版ルールブックと呼べるものになっています。

 たとえば、今回話題にしている【5.08原注】にしても、具体例にはジョーンズ、スミス、ブラウンといった人名が用いられています。これはアメリカの規則や審判関係のテキストでは一般的なことです。しかし、『公認野球規則』では人名は省略し、原文で「ジョーンズが2塁、スミスが1塁」と書いてあるところを「走者一・二塁のとき」と書き換えたりしています。こういう工夫をひとつひとつ考えなければならなかった最初の作業はとても大変だっただろうと思います。

 しかしながら、アマチュア野球では国際試合の機会が増え、プロ野球でも日本人プレイヤーがMLBに移籍することが当たり前になり、NPBを経ないで米国マイナーリーグや世界各地のプロリーグに挑戦する日本人も多くなっている時代において、日本独自のルールブックでよいのだろうかという考えが出てくるようになりました。それで、現在は『公認野球規則』の内容を詳細に検討し、日本独自の解釈はできるだけなくし、翻訳の正確でないところも原文に忠実に合わせていく方向で毎年改正が行われています。【5.08原注】も、そういう流れで「原文通り」に修正したというわけです。

 内容は非常に煩瑣になりますので、最後にまとめておきますから興味のある方はご参照ください。ともかくご理解いただきたいのは、日本の規則委員会は、その発足当初から現在に至るまで、アメリカのルールブックをただ翻訳するだけでなく、常にその内容について検討に検討を重ねて、その時代に合った最良のルールブックを作ろうと努力されているということです。今年、野球殿堂入り(特別表彰)を果たされた故・鈴木美嶺氏は、『公認野球規則』発刊時からのアマチュア野球規則委員として活躍された方ですが、このような形でその功績が称えられることは、わが国の野球界にとって本当に素晴らしいことだと思います。

『公認野球規則』2016年版と2017年版および『Official Baseball Rules』の5.08原注対照表(粟村作成)
jpg画像です。サムネイルをクリックしてください。
obr_comment_5_08

【2017年公認野球規則改正(8)】

(8) 5.08(b)を次のように改める。(下線部を改正)
 正式試合の最終回の裏、または延長回の裏、満塁で、打者が四球、死球、その他のプレイで一塁を与えられたために走者となったので、打者とすべての走者が次の塁に進まねばならなくなり、三塁走者が得点すれば勝利を決する1点となる場合には、球審は三塁走者が本塁に触れるとともに、打者が一塁に触れるまで、試合の終了を宣告してはならない。


 これは字句の修正でより正確な表現を目指した改正で、規則そのものや解釈が変わったわけではありません。「変更ありません」で済ませてもいいんですけど、少し解説します(笑)。

 まず、下線部の最初の方は昨年まで単に「三塁走者が本塁に進まなければならなくなり」と書いてありました。満塁で打者が四球、死球、その他のプレイ(一般的には打撃妨害などが想定されます)で一塁を与えられたら、いわゆる「押し出し」の状態になって塁上の各走者が1個ずつ進塁することになり、当然三塁走者も本塁に進まなければならなくなるので得点、という流れで自然に読み取れる文です。

 これをなぜかなり丁寧な文に書き換えたのかというと、2015年に米国オフィシャルルールで規則の条文構成を大改正した際、法律文書の専門家ということで弁護士さんが規則委員会に参加したんだそうです。その人が、規則書の中で一般の人から見ると曖昧ではないかと思われる表現をたくさん指摘したそうで、この改正もその一環とのことです。

 ですから、ふたつめの下線部も昨年まではその走者が本塁に触れる」となっていて、サヨナラ試合の得点をする走者だから、「その」走者と言えば三塁走者に決まっているだろうと思うわけなんですが、ここも正確に書き改められました。

 ちなみに、このケース(最終回裏、満塁からのサヨナラ押し出し)では、この文言通り、進塁の義務があるのは打者走者と三塁走者だけであって、一塁走者と二塁走者には進塁の義務がないことに注意してください。また、5.08(b)項には「ペナルティ」の規定があり、このケースで適宜な時間が経っても三塁走者があえて本塁に進もうとしなかった場合には球審が自ら三塁走者にアウトを宣告して試合を続行させると明記してあります。また、2アウト後に打者走者が同じくあえて一塁に進もうとしなかった場合も打者走者をアウトとして試合を続行させます(0アウト、1アウトであれば打者アウトで得点は認めてサヨナラです)。

 このペナルティは1957年に追加されました。本来なら守備側からのアピールがなければ規則違反をしている打者や走者をアウトにすることはできないのに、球審が進んでアウトを宣告するというのは革新的なルールとして受け止められたようです。当初日本の『公認野球規則』では、塁上のすべての走者が次塁に進塁する義務を負っているので、規則には明記されていない一塁走者や二塁走者であっても、次塁に進まないでいて守備側からのアピールがあればアウトになるという解釈をとっていました。しかし、「規則の文言通り、進塁の義務を負うのは三塁走者と打者だけである」という解釈に変更したアマチュア野球規則委員会と、「いかなる場合でも走塁の原則を崩すべきではない」と主張するプロ野球規則委員会の見解が分かれた時代があり、アマチュア内規で対応していたようです。結局、1979年にプロ側がマチュア側の解釈に同意したことで、現在の解釈に落ち着いています。

※参考文献『わかりやすい公認野球規則1993』(鈴木美嶺・郷司裕編、ベースボールマガジン社)


【2017年公認野球規則改正(7)】

(7) 5.07(a)(2)【注1】を次のように改める。(下線部を改正)
 アマチュア野球では、本項〔原注〕の前段は適用しない。


 規則5.07は「投手」という大見出しになっている項目で、(a)投球姿勢 (b)準備投球 (c)投手の遅延行為 (d)塁に送球 (e)軸足を外したとき (f)両手投げ投手 の6項目からなっています。その中でも(a)項の「投球姿勢」は(1)ワインドアップポジション (2)セットポジション の2つの投球姿勢を規定しており、投手が投球するに際しての基本中の基本を説明する項目です。

 今回改正された(a)(2)項の【注1】を見る前に、まず規則本文と【原注】を確認しましょう。

公認野球規則5.07投手
(2)セットポジション
 投手は、打者に面して立ち、軸足を投手板に触れ、他の足を投手板の前方に置き、ボールを両手で身体の前方に保持して、完全に動作を静止したとき、セットポジションをとったとみなされる。
(中略)
 投手は、ストレッチに続いて投球する前には(a)ボールを両手で身体の前方に保持し、(b)完全に静止しなければならない。審判員はこれを厳重に監視しなければならない。投手は、しばしば走者を塁に釘づけにしようと規則破りを企てる。投手が〝完全な静止〟を怠った場合には、審判員は、ただちにボークを宣告しなければならない。
【原注】 走者が塁にいない場合、セットポジションをとった投手は、必ずしも完全静止をする必要はない。
 しかしながら、投手が打者のすきをついて意図的に投球したと審判員が判断すれば、クィックピッチとみなされ、ボールが宣告される。6.02(a)(5)〔原注〕参照。


 このように、セットポジションからの投球に関しては、再三にわたって「完全な静止」が要求されています。セットポジションで投手が静止してから投げなければならないことに関しては、もともとは打者へのクィックピッチを防ぐ目的で制定されたとされ、もうひとつの要因として走者の盗塁との駆け引きもあり、厳しく制限されてきました。

 しかし、現在の野球では打者へのクィックピッチよりも走者との駆け引きの方が重視されているので、走者がいないときには完全静止までは要求しなくてもいいではないかということで、米国では2006年の改正で【原注】によって無走者時の完全静止を不必要としました。この改正は2007年の公認野球規則に反映されましたが、規則委員会ではプロアマともに投球姿勢の乱れを懸念して、従来通り走者の有無にかかわらずセットポジションからの投球には完全静止を要求することで一致し、【注1】として「我が国では、本項〔原注〕の前段は適用しない。」が挿入されました。この背景には、当時日本では「二段モーション」を禁止することが決定した直後で、投球姿勢を一本化しておきたい意向があったことも見逃せません。

 それから10年が経過し、今回の規則委員会でプロ側からルール原文に合わせてはどうかという提案があったそうです。国際試合の増加に伴い、アマ側にも賛同の声があったそうですが、最終的には「プロは原文通り」「アマは従来通り」という結論になったので、【注1】が「我が国では」から「アマチュア野球では」に変更されたというわけです。

 いずれにせよ、無走者時のセットの静止はそれほど厳密に適用されてきた事例ではないので、そんなに気にする必要はないかと思います。ただ、アマチュア野球の正式な試合でプレイする場合には、無走者時であってもセットポジションからの投球に際してはあまりルーズな投げ方をせず、両手を合わせた後は静止するクセをつけておいた方がよいでしょう。ただし、打者を幻惑するためのテンポアップのような意図が明白な場合は、審判員も厳格にクィックピッチを適用して、フェアプレイを推奨するべきだと思います。

【2017年公認野球規則改正(6)(10)(13)】

(6) 5.06(b)(3)(C)および同【原注】を次のように改める。(下線部を改正)
 野手が飛球を捕らえた後、ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合
【原注】 野手が正規の捕球をした後、ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、ボールデッドとなり、各走者は野手がボールデッドの個所に入ったときの占有塁から1個の進塁が許される。

(10) 5.09(a)(1)【原注】の末尾を次のように改める。(下線部を改正)
正規の捕球の後、野手がダッグアウトまたはボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、ボールデッドとなる。走者については5.06(b)(3)(C)〔原注〕参照。

(13) 5.12(b)(6)の前段を次のように改め(下線部を改正)、後段を削除する。
 野手が飛球を捕らえた後、ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合。各走者は、アウトにされるおそれなく、野手がボールデッドの個所に入ったときの占有塁から1個の進塁が許される。


 今年の改正の中では、かなり重要なもののひとつです。野手がフィールド内で飛球を正規にキャッチした後でボールデッド地域に踏み込んだり、倒れ込んだりした場合の処置の一部に変更があります。

 原則的な考え方としては、正規に捕球した後でその野手がボールデッド地域に踏み込んだり倒れ込んだりしてしまった場合、捕球は認められますが、ボールデッド地域に入った瞬間にボールデッドとなります。そして、塁上に走者がいれば、各走者はボールデッドになった時点で占有していた塁から1個の進塁が与えられます。

 これは例えば、次のようなケースが考えられます。

(1) 外野手がホームラン性の飛球を追い、フェンスによじ登って捕球したが、そのまま観客席に倒れ込んでしまった。
(2) ファウルフライを追いかけた野手が、フライは捕球したが勢い余ってそのままカメラマン席に飛び込んでしまった。

 このような場合、いずれも捕球は認められてアウトがひとつ増えますが、塁に走者がいれば1個ずつ進塁することになるわけです。

 しかし、昨年まではベンチおよびダッグアウトは例外的な扱いになっていました。ベンチおよびダッグアウトも原則的にはボールデッド地域となっていて、例えば打球や送球がベンチに入ればボールデッドになります。飛球を捕球した後の倒れ込みについても同様で、飛球を正規に捕球しても、ベンチ・ダッグアウトに倒れ込んでしまえばボールデッドとなり、走者には1個の進塁が許されます。ひとつだけ例外だったのが、昨年までは捕球後にベンチ・ダッグアウトに踏み込んでも、倒れ込まなければボールインプレイとしてプレイを続けることが許されていた点です。

 これが今年の改正で変更され、ベンチ・ダッグアウトであっても、踏み込んだだけでボールデッドとなることになりました。これはひとつには危険防止の観点があり、ベンチ前でギリギリ飛球を捕らえるプレイは見せ場でもありますが、ベンチに突っ込んでケガをする可能性もあるので、あまり行き過ぎたハッスルをしないようにしましょうという意味があります。

 少しルールに詳しい方なら、2006年まではベンチ・ダッグアウト内でのフライ捕球が認められていたのが、2007年の改正でベンチ・ダッグアウトに入り込んでの捕球が認められなくなり、その際に日本だけのルールとして今年の改正と同じ「捕球後ベンチに入ったらボールデッド」という【注】が加えられたことを覚えているかもしれません。日本の規則委員会としては米国規則委員会に「危険防止の観点もあり、ベンチ・ダッグアウトも他のボールデッド地域と同じ扱いにして規則をシンプルにしたらどうか」という申し入れをしたそうですが、この時は受け入れられませんでした。

 その後、日本では「捕球後ベンチに踏み込んでもプレイを続けられることが多いので、原文通りにした方がいいのではないか」という意見もあり、2011年改正で【注】は削除されました。しかし、昨年の米国の改正で結局ベンチ・ダッグアウトも含めてすべてのボールデッド地域を同じ扱いにすることになったため、最終的には日本の規則委員会の主張が認められた形になりました。

 ちなみに、昨年までの条文では、「野手が飛球を捕らえた後、ベンチまたはスタンド内に倒れ込んだり、ロープを越えて観衆内(観衆が競技場内まで入っているとき)に倒れ込んだ場合」と書いてありましたが、現在プロ野球が開催される球場でロープで観衆を仕切っている場所などなく、シンプルに「ボールデッドの個所」となったのも、ルールブックの古い表現を改めていく最近の流れに沿ったものでしょう。

 最後にアンパイアリングの情報ですが、ベンチ前へのファウルフライが上がった場合、これまではベンチに近づくのではなく、できるだけ最短距離を進んでフェンスに張り付いて捕球を確認するのが良いとされてきましたが、この規則改正によってMLBでは逆に最短距離を詰めるのではなく、できるだけベンチの前に近づいていこうとするようになっているそうです。これまでよりもややハッスルが必要ですが、ベンチへの踏み込みや倒れ込みを見定めるためには必要な動きだと思います。


プロフィール

粟村哲志

Author:粟村哲志
1975年8月4日広島県生まれ。早稲田大学卒。早大在学中に、故・西大立目永氏に師事して審判を学ぶ。リトルシニア関東連盟審判員、東京都野球連盟(JABA)審判員等を経て、2007年から国内独立リーグで活動。2007年北信越BCリーグ、2008年四国・九州アイランドリーグ、2012BCリーグ、2013~2014年ルートインBCリーグ(クルーチーフ)、2015日本女子プロ野球リーグで審判員を務める。

現在は、リトルシニア関東連盟審判部技術委員(練馬シニア所属)。NPO法人Umpire Development Corporation正会員。関東審判倶楽部(KUC)アドバイザー。東都学生軟式野球連盟嘱託審判員。

監修書に『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)、『バッティングパーフェクトマスター』『ピッチングパーフェクトマスター』(別冊ルール解説、新星出版社)がある。インタビューおよび寄稿に「中学野球小僧」(白夜書房)2006年7月号「実戦で役立つボーク完全解説」p114~121、2007年1月号「ぼくらの野球用具大特集」p46、2007年5月号「7つの場面で徹底理解するランナーのルール」p162~169、2008年5月号「中学球児のためのグラウンドルール&マナー講座」p114~119など。

主な出場記録は以下の通り。
【リトルシニア】
日本選手権大会(00~07、09~15)
全国選抜大会(02、04~05、07、10、13、15)
ジャイアンツカップ(01~02、06~07、09~15)
【プロアマ交流戦】
茨城ゴールデンゴールズ対NPB選抜「フューチャーズ」球審(2007.5.31 水戸市民球場)
【BCリーグ】
2007年公式戦6試合出場
2012年公式戦2試合出場
2013年公式戦37試合(うちGCS2試合)/NPB交流戦1試合/OP戦2試合出場
2014年公式戦(集計中)
【四国・九州アイランドリーグ】
2008年公式戦55試合出場/NPB交流戦2試合出場
【女子プロ野球リーグ】
2015年公式戦(集計中)

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