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『わかりやすい野球のルール』粟村哲志のブログ

『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)監修者である現役野球審判員のブログです

『わかりやすい野球のルール』2019年版発売!



今年も12項目の規則改正がありました。ここ数年に比べると小さな改正ですが、投手の準備投球について長年定められてきた「1分以内8球以内」の制限が撤廃されたり、MLBでもついに1試合でマウンドに行ける回数を「6回」に制限したりと、近年のスピードアップ施策を反映した改正が主となっています。また、長年ペナルティーの与え方が不明だった「フライングスタート」についてもアピールプレイであることが明記されました。

今年の規則改正の本文についてはこちらをご参照ください。
「NPBからのお知らせ」http://npb.jp/npb/2019rules.html

『わかりやすい野球のルール』2019年版では、この12項目について何らかの形で紹介、解説をしています。今年も少ないスペースの中で頭をひねってわかりやすい解説を心がけました。多くの皆様にご購入いただけると嬉しいです。

なお、毎年のお願いで恐縮ですが、ご購入に際しましては本記事中のAmazonへのリンクや、PC版画面では右上に表示されてるAmazonへのリンクからご購入いただけると、わずかですがアフィリエイト収入がありますので、ご協力いただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

【購入用テキストリンク】
わかりやすい野球のルール (スポーツシリーズ)

【2019年公認野球規則改正(1)】

(1)3.01【軟式注】を次のように改める。(下線部を改正)

【軟式注】軟式野球ボールは、外周はゴム製で、M号、J号、D号、H号の4種類がある。M号は一般用、J号、D号は少年用のいずれも中空ボールで、H号は一般用の充填物の入ったボールである。
 ボールの標準は次のとおりである。(反発は150センチの高さから大理石板に落として測る。M号、J号の20%圧縮荷重は、ボール直径の20%をつぶしたときの力を測る。)

M号
直径71.5ミリ~72.5ミリ
重量136.2グラム~139.8グラム
反発70センチ~90センチ
20%圧縮荷重32キログラム~40キログラム

J号
直径68.5ミリ~69.5ミリ
重量127.2グラム~130.8グラム
反発60センチ~80センチ
20%圧縮荷重27キログラム~37キログラム

(以下略)


昨年に続き、軟式ボールの規格が変更されました。昨年は従来の一般用「A号」を新しく「M号」として、今年は中学用「B号」と学童用「C号」を新しく「J号」としました。2006年の意匠変更で一度なくなったディンプル(表面のくぼみ)が復活し、「より硬式球に近づけること」を目的としてバウンドの高さが抑えられた設計になっています。

外野フライの「落球」

 昨日の阪神-巨人12回戦(甲子園)で、最後のプレイが「レフトゴロ併殺打」だったことが話題になりました。

◇ダイジェスト映像
※問題のシーンは4:00頃から

◇試合結果
【NPB公式】http://npb.jp/scores/2018/0527/t-g-12/playbyplay.html
【スポーツナビ】https://baseball.yahoo.co.jp/npb/game/2018052702/top

◇各紙の記事
【日刊スポーツ】https://www.nikkansports.com/baseball/news/201805270000546.html
【スポニチ】https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2018/05/27/kiji/20180527s00001173286000c.html

 プレイ自体は映像や記事を確認してもらえば大体分かると思いますが、一応おさらいしておきます。1アウト満塁から打球はレフトフライ、左翼手が捕球態勢に入って打球をグラブに収めたものの、送球動作に入る際に落球しました。打球判定のため外野にゴーアウトした三塁塁審は「ノーキャッチ」とジャッジして、かなり長い間ノーキャッチを知らせるゼスチュア(セーフの形)をしていましたが、巨人の走者は完全捕球と判断して3塁走者はタッグアップからホームイン、2塁と1塁の走者は元の塁にとどまっていました。しかし、ジャッジがノーキャッチであることに気付いた阪神守備陣は、拾ったボールを3塁、2塁と転送し、それぞれフォースアウトを取りました。選手たちが戸惑っていたためか、審判団が集まって状況を確認し、責任審判からダブルプレイで試合終了と場内に説明が行われました。

 ルールの面で注目するところは、この場合は2つのアウトがいずれもフォースアウトなので、3アウトになるより早くホームインしていった3塁走者の得点が認められないことです(規則5.08a例外)。また、グラブに収めた後での落球なので走者を生かしてしまえば左翼手に失策がつくところですが、結果的に併殺を完成したので失策とはならず、打者の記録はレフトゴロとなるところも面白いところです。

 このプレイを見て思い出したのが、私が四国・九州アイランドリーグで審判を務めていた2008年の試合でのことです。2008年8月24日に新居浜で行われた愛媛マンダリンパイレーツ対高知ファイティングドッグスの試合に、私は3塁塁審として出場していました。

◇試合結果
【四国アイランドリーグplus公式】http://www.iblj.co.jp/game/3307/

 たしか4回裏だったと思いますが、愛媛の先頭打者がレフトフライを打ちました。イージーなフライで、私は軽くゴーアウトしてキャッチのジャッジをしたと記憶しています。すると、次の打者もレフトフライを打ち上げました。今度はやや大きなフライで、私もさっきより少し頑張って走って追いかけましたが、左翼手のYAMASHIN(山本伸一)がフェンス前で追いつき、シングルハンドで捕球しました。私がそれを見て「捕ったな」と思った瞬間、YAMASHINがボールを落とし、慌てて拾い上げたのです。

 まさに、昨日の阪神・中谷将大選手と同じような動きでした。それを見た私は「捕ったのに落とした!」と思いました。その瞬間、頭をフル回転させて、捕球なのか落球なのかを考え、捕球とみなすのは無理だと判断して「ノーキャッチ」のコールをしました。

 もちろん、YAMASHIN本人は捕球だと思っているだろうと思うので、大きな声と力強いゼスチュアで「ノーキャッチ!ノーキャッチ!ノーキャッチ!」と何度も繰り返し、長い時間両手を左右に広げたままにしておきました。私のコールに気付いたYAMASHINは内野にボールを戻すと同時に私の方に駆け寄り「アワさん!捕りましたって!」と抗議してきましたが、そのときは自信をもって下したジャッジだったので、「いや、落とした!気持ちは分かるけど、落としたよ!」と撥ねつけました。

 しかし、ふと気づくと、高知の内野陣が私を取り囲んで口々に「いやー、捕ってますよ~」と言ってきます。YAMASHINも必死の形相で「気持ちは分かるんなら、捕ったでいいじゃないですか!」と抗議してきます。私は一生懸命「いや、落としたって!捕ってないって!」と返事をしながら、内心では「これだけ選手が口をそろえて言うのなら、判断が間違っていたのかもしれない」と思い始めていました。目の前で起こった事実は、目を凝らしてしっかり見つめました。しかし、そこから導くべき解釈が正しくなかったのかもしれないという不安です。

20080824新居浜1
《写真》高知FDの選手たちに抗議されているところ

 そのうち3塁ベンチから高知FDの定岡智秋監督がゆっくりやってきて、審判クルーも私から選手を引きはがしに来てくれました。強硬に抗議されるかと覚悟していたのですが、定岡監督はひとこと「落とした?」とだけ聞かれたので、私は「落としました。捕球とみなすのは無理です」と答えました。監督は「うーん」と少しだけ考えてから、「ん、分かった」と言って引き下がり、不満そうな選手たちにも守備に戻るよう、うながしました。

 実はその直後にあったボークの判定を巡って今度は定岡監督が激怒して大変だったとか、その後YAMASHINが口をきいてくれなくなったとか色々あるのですが(笑)、今回の件とは関係ないので省略します。ただ、この試合は地元放送局でテレビ中継されていて、長い間リーグのホームページにアップされていたため、後で何度も何度もその場面を見ました(現在はその動画は削除されています)。繰り返し確認した中で、打った打者自身がレフトフライだと思ってベンチに帰ろうとしていたところが映っていたのと、YAMASHINの動作を見ると、やはり捕球後の持ち替えの動作で落としているように見え、正直なところキャッチの方がよかったのかなと思う気持ちもあります。

 これはひとつの分析なんですが、例えば同じような「落球」が、内野ゴロゲッツーのピボットマンの動きだったら、これはおそらく捕球を認めてフォースアウトをひとつ取ると思います。しかし、外野手がこの「落球」をすると、みんな慌てた動作でボールを拾いに行くんです。10年前のYAMASHINもそうでしたし、昨日の中谷もそうでした。これが、審判目線では「落とした!」と思ってノーキャッチのコールにつながるのではないかと思っています。昨日の甲子園の実況アナウンサーの人も、最初は犠牲フライと思いながら、転がるボールを追いかける中谷を見て「あ!ボールを落とした!落としましたよ!」と叫んでますよね。ここの見た目がポイントなんじゃないかと思います。

 でも、アップの映像でリプレイを見ると「捕球でいいかなあ」と思いますし、同じグラウンドレベルでも選手目線では「捕球」の判断が大勢を占めるわけです。このジャッジは審判の判断によるものなので、正しいとか正しくないとかいう性質のものではありませんが、多くの人に納得してもらえるジャッジをするためには、こういったところの感覚を養っていくことが大切なのかなと思います。そういう意味では、私は10年前の新居浜で、よい経験をさせてもらいました。
 
 映像を見つけられませんでしたが、過去にMLBでも同じようなケースをノーキャッチとジャッジして揉めたのを見たことがあります。フィールド上で完全捕球かどうかを見極めるのは、洋の東西を問わず難しいようです。

20080824新居浜2
《写真》1塁塁審のボーク判定に激怒して抗議する高知FD定岡監督と審判団(真ん中が粟村)



『わかりやすい野球のルール』2018年版

2018年版『わかりやすい野球のルール』発売開始です!

2018年度規則改正を反映させた『わかりやすい野球のルール』2018年版が、いよいよ3月26日頃から発売開始されます!
※地域によって多少のズレがあります

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↑こちらが最新2018年版です。

【2017年公認野球規則改正(9)】

(9) 【5.08原注】の表現を一部改め、配列を変更する。

 前回の続きで5.08の修正ですが、こちらは日本独自の改正です。【5.08原注】は、これまで米国オフィシャルルールズとは配列や文章表現が異なっている部分が多く、それをできるだけ原文に合わせたのが今回の改正です。ですから、この改正も昨年までと規則の内容や解釈が変わっているわけではありません。

 ちなみに、規則5.08は「得点の記録」という見出しがついている項目で、その【原注】は具体例をいろいろ挙げながら説明を加えてる部分です。ほとんどが“APPROVED RULING”という項目の羅列で、これは本来『公認野球規則』では「規則説明」という見出しになるはずのところ、改正前は多くが「例」という見出しになっていました。また、その例に出てくる状況のアウトカウントや走者の位置をすこしいじってあったり、項目の順番を入れ替えたり、文章を少し端折ったりしてありました。

 プロアマ共通のルールブックとして『公認野球規則』が誕生したのは、1956年のことです。米国オフィシャルルールズを原典としながらも、かつては東京六大学野球のルールブック、毎日新聞社編纂のルールブック、朝日新聞社編纂のルールブック、軟式野球連盟のルールブック、そしてプロ野球のルールブックと、日本には何種類ものルールブックが存在していました。これを統一して日本で唯一の野球規則書を作ろうということになったのが1955年暮れで、プロアマそれぞれの規則委員が条文を一つ一つ突き合わせて作業をしたそうです。

 素晴らしい先達のご尽力によって完成した『公認野球規則』は、それ以降、毎年改正を重ねて現在に至ります。ただ、当時は現在とは通信事情も異なりますし、米国に何かを照会するのも簡単ではなかったり、お互いのやり取りに行き違いがあったりしたこともあったようで、規則解釈を誤ってしまったり、翻訳の内容に日本独自の解釈が含まれたりすることも多かったようです。もともと米国オフィシャルルールズにも、本則とは別に“Comment”(【原注】)、“NOTE”(【付記】)、“EXCEPTION”(【例外】)、“APPROVED RULING”(【規則説明】)という注釈が色々加えられています(カッコ内は『公認野球規則』での表記)。しかし、『公認野球規則』には、これに加えて【注】という項目があり、これが日本の規則委員会独自の解釈や規則説明になっています。この【注】はかなりの分量があり、『公認野球規則』は米国オフィシャルルールズの単なる翻訳ではない、日本版ルールブックと呼べるものになっています。

 たとえば、今回話題にしている【5.08原注】にしても、具体例にはジョーンズ、スミス、ブラウンといった人名が用いられています。これはアメリカの規則や審判関係のテキストでは一般的なことです。しかし、『公認野球規則』では人名は省略し、原文で「ジョーンズが2塁、スミスが1塁」と書いてあるところを「走者一・二塁のとき」と書き換えたりしています。こういう工夫をひとつひとつ考えなければならなかった最初の作業はとても大変だっただろうと思います。

 しかしながら、アマチュア野球では国際試合の機会が増え、プロ野球でも日本人プレイヤーがMLBに移籍することが当たり前になり、NPBを経ないで米国マイナーリーグや世界各地のプロリーグに挑戦する日本人も多くなっている時代において、日本独自のルールブックでよいのだろうかという考えが出てくるようになりました。それで、現在は『公認野球規則』の内容を詳細に検討し、日本独自の解釈はできるだけなくし、翻訳の正確でないところも原文に忠実に合わせていく方向で毎年改正が行われています。【5.08原注】も、そういう流れで「原文通り」に修正したというわけです。

 内容は非常に煩瑣になりますので、最後にまとめておきますから興味のある方はご参照ください。ともかくご理解いただきたいのは、日本の規則委員会は、その発足当初から現在に至るまで、アメリカのルールブックをただ翻訳するだけでなく、常にその内容について検討に検討を重ねて、その時代に合った最良のルールブックを作ろうと努力されているということです。今年、野球殿堂入り(特別表彰)を果たされた故・鈴木美嶺氏は、『公認野球規則』発刊時からのアマチュア野球規則委員として活躍された方ですが、このような形でその功績が称えられることは、わが国の野球界にとって本当に素晴らしいことだと思います。

『公認野球規則』2016年版と2017年版および『Official Baseball Rules』の5.08原注対照表(粟村作成)
jpg画像です。サムネイルをクリックしてください。
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プロフィール

粟村哲志

Author:粟村哲志
1975年8月4日広島県生まれ。早稲田大学卒。早大在学中に、故・西大立目永氏に師事して審判を学ぶ。2000年から中学硬式野球団体で本格的に審判を始め、社会人野球審判員を経て、2007年からは国内独立リーグでも活動する。2007年北信越BCリーグ、2008年四国・九州アイランドリーグ、2012BCリーグ、2013~2014年ルートインBCリーグ(クルーチーフ)、2015日本女子プロ野球リーグ、2017年ベースボールファーストリーグで審判員を務めた。
※リーグ名はその年度の名称。BFLはオープン戦のみの参加。

現在は関東地方を中心に年間200試合前後の試合に出場しながら、後進の育成や野球規則に関する情報発信に努めている。また、執筆活動、インターネット番組司会、野球実況アナウンサーなど多方面で活動中。

監修書に『わかりやすい野球のルール』(成美堂出版)、『バッティングパーフェクトマスター』『ピッチングパーフェクトマスター』(別冊ルール解説、新星出版社)がある。インタビューおよび寄稿に『中学野球小僧』(白夜書房)2006年7月号「実戦で役立つボーク完全解説」p114~121、2007年1月号「ぼくらの野球用具大特集」p46、2007年5月号「7つの場面で徹底理解するランナーのルール」p162~169、2008年5月号「中学球児のためのグラウンドルール&マナー講座」p114~119、『プレジデントオンライン』2018年5月12日「あと10年で"野球部の中学生"は全滅する」https://president.jp/articles/-/25104など。

主な出場記録は以下の通り。
【リトルシニア】
日本選手権大会(00~07、09~15)
全国選抜大会(02、04~05、07、10、13、15)
ジャイアンツカップ(01~02、06~07、09~15)
【プロアマ交流戦】
茨城ゴールデンゴールズ対NPB選抜「フューチャーズ」球審(2007.5.31 水戸市民球場)
【BCリーグ】
2007年公式戦6試合出場
2012年公式戦2試合出場
2013年公式戦37試合(うちGCS2試合)/NPB交流戦1試合/OP戦2試合出場
2014年公式戦(集計中)
【四国・九州アイランドリーグ】
2008年公式戦55試合出場/NPB交流戦2試合出場
【女子プロ野球リーグ】
2015年公式戦(集計中)

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